ここ数年、低金利時代の長期化や金融不安などにより、保有資産を預貯金だけでなく債券や株式、投資信託や外貨建て資産など複数種類の資産に分割して保有する、いわゆる「ポートフォリオ」の重要性が注目されるようになってきています。また、低金利時代の長期化、ペイオフの一部解禁などを受けて、資産保有の一形態としてワンルームマンションやアパート、事務所ビルなど、いわゆる「収益不動産」も注目されています。
最適なポートフォリオ(保有資産をどのような割合で保有するのがもっとも適切か)は個々人の家族構成、年齢、嗜好、職業などによって千差万別ですが、各資産の保有資産としての特徴をしっかり把握し、自分のライフサイクル、ライフイメージに合わせた資産バランスを実現することが重要になります。
特に、不動産は2つと同じ物がない個別性の強い資産ですし、他の金融資産にはない特徴があります。そこで、「不動産」という資産の特徴を簡単にまとめてみましたので、最適なポートフォリオ実現の参考にしていただければ幸いです。


○ 資産としての"不動産"の特徴
(1) 実物資産であること
不動産は、そのもの自体が実在する資産ですので、金融資産のように、何らかの要因によって「紙くずになる」といった心配の小さい資産といえます。また、「自ら使う」ことも可能な点で他の資産と異なる一面があります。


(2) 相続税法上の評価額が軽減されること
不動産保有のメリットとしてよく知られている点です。預貯金、現金などが額面金額で評価されるのに対し、土地(市街地)は相続税路線価(公示価格の80%水準)により評価されるほか、建物についても実際の建築費コストよりも低い価格で評価されるのが通常です。また、不動産を賃貸した場合には、その分相続税評価額が軽減されるため、さらに税額が小さくなるといったメリットがあります。


(3) 保有コスト・手間がかかること
不動産は、保有しているだけでもコスト・手間がかかる資産です。固定資産税や都市計画税などの税金に加え、維持管理費用がかかるほか、建物の価値を適正に維持するためには、定期的な修繕費用も必要となります。更地でもまったく管理せずに放置すると荒れ地になってしまう危険性もあります。また、不動産の管理は個人では対応できない部分もありますので、管理会社など専門業者の助けが必要なケースもあります。


(4) 流動性が低いこと、分割しづらいこと
不動産は流動性に劣る(無理に売却を急ぐと本来の価格以下での売却を余儀なくされる恐れがあります)資産といわれます。分割するのも困難(敷地を2つに区切る、などの方法も考えられますが、現実には難しいことが多いです)です。ですから、保有資産全体の割合の中で不動産資産の割合が極めて高い場合には、流動性に優れた資産への組み替えを検討することが必要かもしれません。また、不動産投資は(2)のように相続対策としてなされることが多いですが、流動性の問題、分割しづらいという問題も一方でありますので、将来争いがおこる懸念がある場合、納税資金に不安がある場合の不動産投資は、むしろデメリットの方が大きくなることも予想されます。